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「チンコロ市」「でちこんか」変わった名前の市(いち)の謎

「チンコロ市」「でちこんか」変わった名前の市(いち)の謎

変な名前の市(いち)の謎

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全国には「チンコロ市(いち)」「でちこんか」「川南トロントロン軽トラ市」のように、名称を聞いて思わず「え?」と聞き直してしまう変わった名前の「市(いち)」がある。そんなユニークな名前の「市」について、各地で開催される市について紹介した本「市めくり」(京阪神エルマガジン社)を企画・編集した小西七重さん(タイムマシンラボ)に話をうかがった。

「カッチン玉祭」(名古屋市)縁起物の飴

●「でちこんか」(愛媛県北宇和郡鬼北町)10月第2土曜・日曜開催

 「『でちこんか』とは、この地方の方言で『出てきませんか』という意味です」

 鬼北町は四国西南の中山間地に位置しており、「でちこんか」は四万十川の支流・奈良川の河川敷で開催される。前夜祭から気合が入っていて、地元や県外から集まった太鼓集団などの邦楽グループによるライブが行われる。2日目は、およそ100軒の露店が並び、2500食分の巨大なキジ鍋が振る舞われる。

 「鬼北町特産のキジ肉と、根菜がたっぷり入ったスープは大人気です。川ではアユや、ニジマス、アマゴが数千匹放流されるつかみ取り大会も行われます」

 筆者がつかみ取りに挑戦したら「アユ、でちこんか」「ニジマス、でちこんか」と言いながら、ずぶぬれになりながら川で悪戦苦闘ことになりそうだ。この方言がこのような使い方で合っているのかどうかはわからないが……。

 鬼北町の人口はおよそ1万人だが、「でちこんか」には3万人の人出があるそうで、地域の一大イベントとなっている。昨年は台風の接近で休止となってしまい、今年は例年以上に盛り上がりそうだ。

●「川南トロントロン軽トラ市」(宮崎県児湯郡川南町)毎月第4日曜 8時~12時15分開催

 「約600メートルに及ぶ商店街(川南町トロントロン商店街)に150台もの軽トラが並び、市が開かれます。来場者は毎回1万人を超え、日本一の軽トラ市として知られています」

 ……なるほど。だから「トロントロン軽トラ市」っていうのか…。いや、感心している場合ではない。問題は「トロントロン」の意味だ。付近に湧き出ている湧き水と、高低差で生まれた小さな滝の水が落ちる音を「トロントロン」と表すようになったという。川南町では商店街や交差点の名前やイベントホール「トロントロンドーム」など、いろいろなところで「トロントロン」が使われている。(「トロントロン」の語源ついては諸説あり)

市が終わると、帰っていく軽トラの渋滞が起こるそうで、ゆっくり、トロ(ン)トロ(ン)と軽トラが列を作っていくのだ。次回は4月26日(日曜)に開催。

●「カッチン玉祭」(愛知県名古屋市)毎年2月26日

「安産、生育、子宝の神として親しまれる六所神社の例大祭(通称・カッチン玉祭)で、カッチン玉という縁起物の飴(あめ」が売り出されます」

 カッチン玉は、さまざな色が竹の先に練りこまれている飴で、大きさも数種類用意されている。境内には露店が並びにぎわいを見せるが、やはり赤ちゃんを連れて訪れる女性が多いそうだ。

 「カッチン玉の由来には諸説あり、かつてうっそうとした森だった境内で、用心のために用いられたたいまつの火を模したという説や、赤ん坊のへその緒という説もあるそうです」

●「チンコロ市(節季市)」(新潟県十日町市)1月10日・15日・20日・25日

 「節季市は、江戸時代に、農家が主に冬季間の副業として竹や藁(わら)などで編んだ篭(かご)や山笠などの日用品や民芸品などを持ち寄って開いたものです」

 なかでも、犬や十二支を型どった小さなしんこ(米の粉)細工の「チンコロ」が人気で、別名「チンコロ市」とも呼ばれている。大きさは3センチくらいで、手作りのため一つ一つの顔や表情が異なる。大人気なのでおおむね午前中で完売するほどだ。作った人からすれば、チンコロが売れていく様子を見れば「俺のチンコロもなかなかの人気だ」と、うれしいに違いない。

 「ネットでいろいろなものが手に入る世の中ですが、相手の顔が見えるところで買うと、単に「買う」というよりは、その人から譲り受ける感覚で買うところも市の魅力の一つですね」と小西さんは語る。

 連日、ユニークな市が各地で開催されているが、とかく見落としがちだ。市によってはネットではあまり情報が公開されていないものもあるため、興味がある人は「市めくり」(タイムマシンラボ編著/京阪神エルマガジン社刊:発売中)で確認を。

取材・文:やきそばかおる