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異色コラボのグリーンカレー

世界初の抹茶ソフトクリーム!? 和歌山県人のソウルフード「グリーンソフト」秘話

世界初の抹茶ソフトクリーム!? 和歌山県人のソウルフード「グリーンソフト」秘話

和歌山を代表するご当地スイーツ「グリーンソフト」の「やわらかいの」(写真左)と「固いの」

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 和歌山には、その商品名を聞くだけで誰しもが顔をほころばせるスイーツがある。安政元年創業の老舗茶店「玉林園」(和歌山市出島)が、1958(昭和33)年に販売を始めた抹茶入りソフトクリーム「グリーンソフト」だ。

 玉林園は、明治初期に政府から払い下げられた和歌山城を一時所有・管理していたこともある、和歌山に縁の深い企業。お茶の製造販売以外にも、「グリーンコーナー」という飲食店8店舗を和歌山市内で運営し、お茶やグリーンソフトだけでなく、なぜかラーメンも提供している。団塊ジュニア.世代が中学生、高校生のころは、天かすとガリが入った「てんかけラーメン」が1杯190円で食べられたのだ。

 そんな玉林園の主力商品「グリーンソフト」は、世界初の抹茶ソフトクリームとして、和歌山県民は少なからず誇りに思っている。「本当に? 証拠でもあるの?」と言われると困るのだが、和歌山県広報課の公式サイトには「老舗が考えた世界初の抹茶ソフト」と紹介されている。

 一体、何をきっかけにグリーンソフトが生まれたのだろうか? 玉林園飲食店事業部課長の堀田潤子さんに話を聞いてみた。

 「抹茶のソフトクリーム開発のきっかけは、夏場にお茶の売り上げが減るのを補おうとしたからです。当時はまだまだソフトクリームを製造する機械が珍しく、味もバニラしかありませんでした。アメリカでミルクに抹茶を入れて飲まれているのをヒントに開発を始めたそうです」

 当時の社長、林己三彦さんが「抹茶味は日本の文化。日本にまだない商品であれば、世界初だろう」と言ったことから「世界初の」と銘打つようになったそうだ。発売から5年たった1963(昭和38)年3月26日の読売新聞でも「全く新しい商品」と報じられていることから、当時国内で抹茶味のソフトクリームがなかったことは間違いなさそうだ。

 2013年度のグリーンソフト販売数は約132万個。和歌山県民の人口が約97万人だから、単純計算で県民全員が1年に最低1個は食べていることになる。まさに和歌山県人のソウルフードだ。

 製法や味は当初から変えておらず、それが和歌山県民に愛され続けている理由につながっているのでは、と堀田さんは推測する。「和歌山を思い出す、『故郷の味』になっている。両親から和歌山を離れて住むお子さんへ送る、帰省したから店舗へ食べに来る、といった話をよく聞きますね」

 工場長は製法について「製菓用としてはグレードの高い茶葉を使用し、子どもでも苦みを感じずに食べられるギリギリの量で抹茶とミルクを配合しています」と教えてくれた。確かに、和歌山では子どもたちもグリーンソフトが大好きだ。誰でもおいしく食べられること、そして品質にこだわりながら味を保っていることがロングセラーの秘密なのかもしれない。

 そして、グリーンソフトを語る上で欠かせないのが、「どっちが好きか」論争である。店頭で搾る「ソフト」(通称=やわらかいの)と、モナカのふたをかぶせて冷凍した「ハード」(固いの)の2種類があり、きのこ派・たけのこ派の議論と同じように盛り上がるのだ。

 食べ比べてみると、「ハード」は甘みが抑えられてさっぱりとしたアイスらしいシャリシャリとした食感が楽しめる。一方、「ソフト」は舌触りが柔らかく、抹茶の香りとミルクの甘味が口の中にふわっと広がる。どちらも苦みはなく、お茶の香りと爽やかな後味である。

 ズバリ、どちらが人気なのか。堀田さんに聞いてみたが、「一概には言えない」という回答だった。「ソフト」は機械を設置しなければならないため、年間販売個数は全体の約15~20%にとどまるが、店頭で両方を販売していると「ソフト」を買う人が圧倒的に多いという。お持ち帰りして家でストックしておける「ハード」、店頭でしか食べられない「ソフト」。どっちが好きか論争に終わりはなさそうだ。

 もう一つ。和歌山県人の間では、「グリーンソフトは和歌山以外では売っていない」というのが半ば常識とされている。しかし、玉林園は発売当初から「どこでも売りやすいように」と販路拡大を目的に冷凍のソフトクリームを開発していたのだ。そのため、実は発売当初から全国の小売店へ向け出荷されている。現在は、全国100近くの小売店のほか、阪急うめだ本店(大阪市北区)の「日本の銘菓撰コーナー」、関西国際空港(泉佐野市)の「わかやま紀州館」などで販売。オンラインショップで取り寄せもできる。

 和歌山県が誇るローカルスイーツ「グリーンソフト」。どこかで見かけたら、ぜひ世界初の抹茶ソフトクリームを食べてみてほしい。さわやかな甘みが癖になるはずだ。

取材・文:万谷絵美/和歌山経済新聞