パーフェクトデイズ感想・口コミ・レビュー

1/20 16:15の回
ユナイテッドシネマ キャナルシティ博多

元々注目していた作品だったが、年末年始になかなか時間が取れず、このタイミングでの鑑賞となりました。
普段、映画は公開日または公開から1週目で見ることが多く、タイミングを逃したらサブスクやレンタルでいいやと思うのですが、
すでに見ていた友人たちからの評価もものすごく高かったので、少し遅れての鑑賞となりました。

スクリーン4番で鑑賞。収容人数はは120人程度。
映画館全体の混み具合としては、前日に公開されたゴールデンカムイの影響か、混雑気味。
夕方の回だったこともあり、若年層やファミリー層など幅広い年齢層の方が見受けられた。
特に、売店はかなり混雑しており、ポップコーンなどは買わずに鑑賞。

席はF列の真ん中。
前が通路になっているのでスクリーンが見やすい位置でした。
ネットで購入時は席はかなり余っていましたが、上映劇場が少ないのもあり、上映前には8割以上埋まってました。
年齢層は、ほかのスクリーンに比べると高め。
一人で鑑賞している方が多くいた印象。

最初に感じたのは、この映画のアスペクト比が最近では珍しい4:3で撮られていたこと。
このアスペクト比がこの映画のノスタルジックさにとてもフィットしていたと思いました。
映画の内容としては、役所広司さん演じるトイレ清掃員の平山の日常が切り取られた映画です。
一日のルーティンが決まっている平山の平凡な毎日を描いているのですが、
全く同じ一日は接して訪れることはなく、何かしら、普段と違うことが起こる。
自分の生きたい生き方で周りに干渉されず生きてはいるが、生きているということで、自分は気づいてはない部分で誰かに干渉しているのだなと
ただ、それが人生なのだというのを改めて感じさせられる作品でした。

ヴェンダース監督というドイツ人監督ならではの日本の風景の切り取り方が映像美として楽しめる作品でもありますが、
浅草周辺独特の下町の描き方がかなりリアルだなぁと下町出身の自分は関心をしました。
特に、銭湯、古本屋、地価の飲み屋やスナックなどの下町風景は、全く違和感がなかったです。
監督は浅草出身のドイツ人ですか?というくらい切り取り方が上手な方だと思います。
また、トイレ清掃員が主人公という切り口に関しては、
トイレ掃除と毎日を丁寧に過ごす所作から、ヴェンダース監督がが注目する「日本人の美意識」を具現化するのに最適だったのだなと思いました。
(海外の方からは日本の公衆トイレの綺麗さに衝撃を受けたという話もよく聞くので)

そして、なにより圧巻なのは役所広司さんの演技です。
カンヌで男優賞をとったことで話題になりましたが、この作品、かなりセリフが少ない作品です。
役所広司さんが演じる「平山」という人間は多くのものを求めず、生活と好きなものが最低限あればいいという生き方をしてます。
なので、人間関係の幅も少ないので、会話のシーンがほかの映画に比べるとすくないです。
ただ、関わってくる人間ももちろんいますが、基本的に無口な「平山」なので、言葉での表現は多くなく、
役所広司さんの行動や、醸し出す雰囲気で、今「平山」という人間が何を考え、どう感じているのかを感じ取ることができました。
役所広司ってやっぱりすごいんだな・・・と改めて思う作品です。

何か大きな事件が起こったり、大恋愛があるような作品では一切ないです。
ただ、この日常というものが非常に平凡に描かれてる作品です。
その平凡がどれほど尊いかを感じさせてくれる作品でもあるので、終わった後素敵な余韻に浸ることができました。

今年の初めに見た映画なのに、もう2024年見た映画NO1が決定してしまいそうないい作品でした。

パーフェクトデイズ感想・口コミ・レビュー

日本アカデミー賞が発表される前日、岡山の街の小さな映画館にて鑑賞しました。昼頃だったと思います。
フランス人監督が日本で日本人に向けた映画を撮影した、それも役所広司さんを主演にして。それだけで見にいく価値があるなと思い、観に行きました。

日本アカデミー賞が発表される前日、岡山の街の小さな映画館にて鑑賞しました。昼頃だったと思います。
フランス人監督が日本で日本人に向けた映画を撮影した、それも役所広司さんを主演にして。それだけで見にいく価値があるなと思い、観に行きました。

館内は映画好きがちょこちょこいるような感じで、年齢層も平日ということもあってか、かなり高め僕のような20代は片手に収まるほどしかいませんでした。その映画館は館内での飲食が禁じられているので、誰も何も食べず画面に集中していました。

スクリーンはさほど大きくありません。どちらかというと小さい方だと思います。席も200あるかないか。そんな小さな映画館の真ん中に人が集まり鑑賞していました。映画好きが行く映画館というだけあってみんないい席を知っています。

かなり静かで日常を描いているので気迫も少ない落ち着いた映画だなという印象です。
自己紹介はしっかりされているんですが、大きな事件や展開があるわけではないので、このタイプの映画を見たことがない人が見ると少し退屈するかもしれませんが、そーいった方に向けて作られた映画では全くないですし、僕は覚悟して観に行ってたのでつまらないなという感情は全くありませんでした。
見入ってしまうのはなんと言っても役所さんの演技力が素晴らしいからだと思います。最初の15分程度の無言でトイレ掃除をするシーンや最後の2分車を運転しながら泣き笑いをするシーンなど本当に役所さんの演技が素晴らしくてなんとも言えない複雑な感情になります。かなりこの映画は影と境界線に目を向かられているのですが、そこを見る役所さんの目の表情がもーすごい。そこがこの映画を難しすぎるものでなくしている大きな要素であると思います。
そしてフランス人監督が切り取る日本も興味深いです。都会のトイレって意外とオシャレだなと思わされました。そして木漏れ日って日本独特の感性なんだなと思いました。
個人の見解ですが、この映画に秘められたメッセージは住む世界とその世界に住む人の陰というところにあると思います。
役所さんの演じる平山はトイレ清掃員というところからもわかるように裕福な暮らしは全くしていません。ですが、皆がしたがらない仕事を真面目にしているし、車の中でカセットテープを聞いたり、昼休憩で行く神社の木漏れ日や朝仕事に行く前の朝陽を見て笑ったり喜びを感じられるようなまさに仙人のような暮らしをしています。なので今の暮らしに対して満足しているし達観したように感じるのですが、平山の表情の中にどこかしらの影があります。後半のいくつかのシーンとエンディングはその影の中で我慢していた感情が爆発して涙します。そして、彼はいつも行く駅地下の少し汚い居酒屋で綺麗な改札口を見たり、ボロアパートから仕事場に行く時スカイツリーの下を通ったのを合図にカセットテープを流したり。違う世界に目をやるもののいかなかったり、違う世界に行く瞬間音楽に頼ったり、違う世界に住んでいるという認識がはっきり平山の中にあり坂が交わる境界線を越えることに恐怖を覚えている印象がありました。その原因は妹との会話の中にあった父におそらくあり、そこが彼が下の世界で生きていて抜け出さない理由だと思います。
だからこそ彼は木漏れ日や影に対して強い執着があり、そこに対して触れられることに対して大きな劣等感があり、そこを妹につかれたり、上の世界の人と触れたりしたことで涙を流しながら笑って自分を保つほど辛い状況に陥ってしまうんだなと思い見てるこっちも辛い気持ちにもなりました。
上の人は気にしてなくても下は気にしているし触れられないのも嫌だし触れられて優しくされるのも辛い。難しい感情を役所さんを通して観れました。
アカデミー主演男優賞とったのは妥当と言わざる得ません。
そんなに素晴らしいです!

 

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